【生命の水】
【生命の水】
コロナ禍で、今年東京で、
私達は、飲食店での「禁酒」を経験しました。
日常の飲食、特に夜。
多くの人は、気まぐれで店に訪れる。
お酒が飲める人の多くは、きっと「軽く一杯」と思って来るのだろう。
アクアビテ、ウシュク・ベーハ、エリクシール等、古くお酒を指す言葉はみな「生命の水」を意味している。
人が作るお酒の歴史で最も古いものがワインとされるが、その痕跡は紀元前7000年も前から、確実な証拠とされるものもアルメニアで紀元前4100年とされる。
しかし、それよりもさらに古いであろう予測として、自然発生的に生まれるお酒があったとされる。
糖分のある果実の自然発酵であり、猿も飲んだのであろうと「猿酒」と呼ばれたりする。
これは現在も、メキシコのテキーラの原料のアガベの、地上に出ている部分にも自然発生のお酒は見られると言う。
先日、自家製ジンジャーシロップを作った際、意図せず発酵が始まり、数日後、蓋を開けた時にはシャンパンが噴き出す様に、泡が出てボトルの半分も流れだしてしまった。
禁酒を受けて再確認した事。
お酒は思ったより人にとって身近な存在だった。
ふとした時に、気軽にそこにあるもの。
そう思うと古くから世界中どこでもお酒はつくられていて、それを「生命の水」と呼んでいた事を思い出した。
【温かいお酒】
コトコト、コトコト。とお湯を煮立てる。
国産のハーブのリキュールに蜂蜜、シナモン、生姜、レモンを加えた耐熱グラスにお湯を注ぐ。
フワッと上がる何とも言えない優しい香り。
寒い冬の季節には、ホットカクテルがいい。
飲む前にまず冷えた手を温めてくれる。
飲んでいると、体の内側からポカポカとしてくる。
温かいカクテルを飲んでいると心も落ち着いてくる気がする。
「不要不急」とは何だろうか。
「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」(広辞苑)
やむ終えず発せられた言葉なのは良く理解できるが、改めて考えさせられた。
日常生活は、急でも必要でも無い事に溢れている。自分の選択肢があり、そこに安心もある。
温かいカクテルを飲んでいると、ホッと出来る安心感を得られる。
【寄り添い酒】
年の暮に、人生で初めて1人でお寿司屋さんに行ってみた。
扉を開けると、私の予約席以外カウンターは満席。
年末のお寿司屋さんは活気があっていい。
おまかせの肴に、おまかせのお酒を頼む。
手酌カウンターの一人酒。
とても良い。
大将が良いタイミングで、おつまみを出してくれる。丸々と太った真鰯の半身をお刺身で。もう半身を塩焼きで。
ついついお酒が進んでしまう。
隣のお客様の握りを頼む声に、ついつい私もそれをお願いします。と言ってしまう。
少し大将の手元が落ち着いた頃に、さらにおすすめを少し握ってもらう。
それに合わせて、次のトックリがコトっとカウンターに置かれ、私に寄り添ってくれる。手酌酒の相棒だ。
これもまた伝統的な「生命の水」の頂き方。
「和らぎ水」や「あがり」も付いてくる。
こうしているうちに、今年も一年が終わる。
いろいろ振り回されてしまったけど、最後はゆっくりお酒が飲める日常に戻ってくれた事はよかった。
この場をお借りして、今年の最後のご挨拶とさせていただく方もいらっしゃると思います。
皆様どうぞ来年は幸多き年となります様、心よりお祈りいたします。
良いお年をお迎えくださいませ。
今年も一年ありがとうございます。
2021.12.30.
Cafe&Bar Blue Reef 店主 角井正朋