【奇跡の一本松の根展】

【奇跡の一本松の根展】

2022年4月2日。

『奇跡の一本松の根』展に行く事が出来ました。

https://www.rinri-jpn.or.jp/news/16815/

展示期間2023年2月9日まで(予定)


場所は、『紀尾井清堂』

麹町駅から徒歩で5分程の所にある。ガラス張りの素敵な建物。

約7万本あった高田松原も震災の津波により流失。その中で一本だけ残った『奇跡の一本松』。

希望の象徴として保存整備される事となった。


賛否もある中、国内外からの募金でその費用を賄う事が出来たが、初めての事だらけの挑戦に、技術的にも困難を極めた。


全国の様々な職人達の手と、地元の多くの人達の思いによって成し遂げられたプロジェクトの映像と共に、その一本松の「根」が今東京に展示されている。


長年、巨大な木材の加工特化して携わって来た職人ですら、初めての試み。その中で、この木に触れた職人は、「触って、削る事で、この樹齢173年の木がいかに良木だったか。」を語っていた。


春の光が優しく差し込む、『紀尾井清堂』の一階にその根は展示されていた。想像を超えて大きく広く伸びていた。力強い生命力を感じさせた。


何の説明も聞かないで、ただ見ただけでも、その根は偉大だった。そして、その根がどうして残されたかを知っている私達は、それぞれに多くの事を感じるのだと思う。


きっと、それを知らない世代の子供達も、それを見て何かを感じるのだろう。


連れて行った息子の目が真剣だったように。



【親知らず粉砕も、、】

月曜日に「親知らず」を抜歯してもらいにいった。左下の「親知らず」はレントゲンで見るとほぼ真横に倒れていて、その一部だけが頭を出している。

それを砕いて抜いて縫合するのだが、私の歯が硬すぎて中々進まない。場合によっては2度に分けての抜歯となるとの事前説明。はじめに出ている部分を砕き抜く。そうすると根っこは何日か置いておくと抜け易くなるとの事。


結局、根っこは残したまま次回に持ち越し。

縫合されるが、なかなか血が止まらない。


意気込みとしては、その日もお店に立つ予定だったが、それどころでは無い。

痛み止めはそれなりに効いているものの、大量の出血に、すべてのやる気が萎んでゆく。

もうこういう時は布団にくるまるしかない。雨の降る寒い日だったので、部屋も暖房で暖める。口の違和感に眠る事は出来ない。ただただ、心を無にしたかった。


お店を休む告知も、すぐには書く力が湧かない。


治療から何時間かして、やっと、短くお休みのお知らせを書かせて頂き、お店のLINEにアップ。完全に心はお休みモードに。

血が出ていたら、カクテル作る為の味見も出来ないので。

現実の痛みと出血と不安。伝わら無い言い訳で自分を納得させて、ただ布団に潜り込んでやり過ごす。



【街の片隅で】

その日の昼間、ラジオから「トー横界隈」に集まる子供達の話が聞こえて来た。居場所のない若者達、消費しないと自分に存在価値が見出せないと。推しに貢げ無くなったからもう自分に価値が無いともいう。


「本来、人は何もしなくても肯定されるべき存在ですと。」と投稿されたハガキに、

「私もそう思います。」と迷いなく答えられるラジオパーソナリティ。

そんな風に迷いなく思える人が、どれだけ居るのだろうか。

少し前まで、コロナで仕事を休む事になっていた私も、必死でその日にした事を思い出し、肯定の要素をさがした。

「ジムで汗を流した。」「植木に水をやった。」「掃除、洗濯をした。」「ご飯を作った。」


ただずーっと何もせず、寝ていても、誰かが肯定してくれただろうか。


生産され、消費されて行く社会の、「この街の片隅で。」

様々な人がいて、巨木を加工する職人がいて、小さな歯を丁寧に砕く医師がいて、

でも多くの人はそんな立派な形容詞を持っていなくてもいい。


生命力をもらって、美しくも畏れを感じる大切な時間や、動けなくなって諦める雨の日の夕方も、同じ自分であり、これからもそうなんだと、自分で自分に言い聞かせる。


『奇跡の一本松の根』の様に強くはなくても。

さてまた、本日より営業開始させて頂きます。

まだ、抜歯の後遺症はありますが、ゆるりゆるりと。


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