【やちむん体験】

【やちむん体験】

〜沖縄で陶芸家をやりながら、のんびりと暮らしております〜

そんな風に思ってしまう程に、土の感触は優しく、沖縄の風土は自然と共に生きる事を感じさせる。

2025.2.11〜2.15まで沖縄に旅行に行ってきた。旅行というと、なんか、あれなので、『なぜ、沖縄で飲むオリオンビールは美味しいのか?』というテーマで探る研修と称して。

一旦建前は置いておいて、今回の体験は『やちむん体験』。

沖縄県国頭郡本部町瀬底。瀬底大橋を渡って行ける瀬底島。那覇空港からは100キロほど北に。美ら海水族館まで後20分くらいの辺りにある島。今回訪れたのは、その島で工房をされている瀬底島ポタリさん。

そもそも、『やちむん』とは焼き物、つまり陶器の事。琉球グラスとやちむんは、沖縄でも有名な郷土品で、東京でもそのファンは多数いる。

ポタリさんに着くと、エプロンを貸してくれる。そして早速体験が始まる。

シトシト降る雨は、工房を凛と冷やし、淹れたてのお茶が手を温めてくれる。

見た目は、それぞれに少し色の違う3色の土を溶かした様な濁った水。

これを乾燥させた器に塗り、窯で焼くと伝統的なやちむんの色、土地でとれる釉薬の色、緑、赤、青と変わるという。

今は釉薬の数も増えて、土地で取れるもの以外のものを使う作り手さんも増えているとの事で、鮮やかな、そして深い沖縄の『美ら海』を1枚のやちむんに表現したものもある。

【轆轤(ろくろ)】

手をしっかり水に濡らし、柔らかい土に触れる。ゆっくりとペダルを踏むと、本土とは逆周りに、それは回るのだという。

少し慣れてくると、時にとても優しく、そして、思い描いた形を作る為に少し力強く。もう少しだけ強く。もう少し薄く。

「むにゃん。」

無音に土は、そんな音を立てたかの様に形をおよそ回転とは無縁の姿に変えてしまう。

もう一度、新たに土をセットしてもらい挑戦する。

良い感じた、慣れて来た、薄くしすぎず、でも厚い部分の土はしっかり移動させていく。最低一周回らないと整わない。

「むにゃん。」

息子の方を横目で見ると良い感じの筒状の何かが出来ている。

再度、指を濡らして、それぞれの指の平に集中する。段々それぞれの指の役割が生まれていくのを感じる。力の入る指の平の水気が引いていくと、一旦とめて桶に手を浸す。

無心になれる。

この懐かしい感覚。

昔、今思えば悍ましい(おぞましい)程に、ぐちゃぐちゃの土に手を突っ込み、爪をめり込ませて、穴を掘り、山を作り。服を文字どうり泥々にした。

そんな土に、今は崇高な民藝体験として再会する。

「むにゃん。」

「少し慣れて来たら、1つ仮の作品として取っておきましょうか。」と。

期待より少し小さな、少し浅めの、しかし驚くほどまん丸に整った1枚が出来上がり、それをキープする。

これが、轆轤(ろくろ)体験だ。

少し慣れても、ふとした途端に、

「むにゃん。」

となる。

自分でそれを整えてまた挑戦出来るならいいのだが、一度くずれた土は再度練り直さ無いと使えないとの事で、毎度、職人に土をこねてもらい、ろくろの中心に乗せ綺麗に回るようにベースの形に整えてもらう。

実はこれがなかなか難しく、素人には出来ない。失敗するたびに新しい土で整えてもらうのは、気が引けてしまう。

【職人と生業】

ろくろ体験は、童心にかえり、無心になれる。自然に戻る非現実性。しかしこれを「生業」とするには、余りにそこは深い。

ろくろ体験は、わかりやすくその事を教えてくれる。少し練習すると、丸くある程度、それっぽくなるが、同じ形、同じ大きさは再現出来ない。

それに加えて、土選び、釉薬選び、窯での焼き加減。窯で焼くと、焼く前より一回り小さくなる。釉薬も焼く前と焼いた後では、全然違う色に変わる。

10年近く修行期間を得て独立するのだと言う。

〜沖縄で陶芸家をやりながら、のんびりと暮らしております〜

なんて言える様になるのは随分先の話の様だ。

形を整えて、和風のお皿の様になった私の作品と、息子は小ぶりのマグカップを作った。工房に飾られてる「やちむん」を見せてもらい、好きな柄を見つけて、こんな風な仕上がりでと、職人にお願いする。

後日、色を付けてもらい、焼いてもらって2週間くらいしたら、届くとの事。

、、、丸いお皿は思ったよりもよく出来たと自負していたが、いざ、出来上がりを見ると目には見えない部分の厚さが歪だ。

色付けは職人の技なので、素晴らしい仕上がりなのだが。。

息子のマグカップも見てみる。

あれ?と。

一見普通に見えたカップの仕上がりが中々良い。少し上に開いた感じ、それに合わせた柄。これは売ってたら買ってしまうなと。シンプルに見えた、五寸皿の絵付けも、なんか息子の方がいい。

もしどちらかを弟子に取るなら、11歳の息子と46歳の私。年齢的にも才能的にも未来は息子の方に分がありそうだった。

手を洗って、エプロンを返す。

貴重なやちむん体験の感謝を伝える。

ホテルまで車で送ってくれる予定ではあったが、さっき迄の雨も上がった様で。

少し歩きたい気分だった。

2月の沖縄の雨上がりは、南国だけど冷えていて、空気が澄んで土と葉の香りがする。

工房からホテルまでは地元の細道を歩いて15分ほど。たまに先が見えないほどにサトウキビが生い茂っている道もある。

所々に防砂林としての福木並木がある。

大きな角をもった水牛が、真っ黒な瞳でこちらを見ている。猫もこっちを見て何処かに消えてゆく。

海の方の空が少し夕陽に染まっている。

「すごく癒されたし、楽しかったけど、これを生業にするには、ちょっと奥が深すぎたな。」

と、私。

「そりゃ、そうでしょ。」

と、妻。

何も言わずに後ろから、息子

角井の和皿↑

角井の絵付け(珊瑚と花)↓

息子のマグカップ↑↓

息子の絵付け(花)↑

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【遠くで聞こえた気がする。】